湯布院奇行というカオス(8月24日)
また暑い。去年よりマシだったね、なんて話していたら、すぐこれだ。
汗をダラダラかきながら歩いていると、「おや!」と声をかけられた。
漫画家の川勝徳重さんだった。炎天下の中、川勝さんは両手でスキャナーを抱えていた。
「何事ですか?」と訊くと、「いま、漫画の歴史を一冊にしようとしていて、これから『まんだらけ』に行くんです」と言う。
聞けば、『まんだらけ』にある希少な漫画をスキャンして、資料として使うらしい。その本は、『まんだらけ』の出版部門から来年出す予定だという。
「この一年は、この本につきっきりでして……。ほとんど籠ってます。お金がヤバいです」青白い顔の川勝さんはそう言うと、「じゃ!」とスキャナーを大切そうに抱えて、去っていった。
川勝さんは、資本主義の外側で仕事をしているかのように見える。いつも、好きな仕事、納得する仕事以外、興味を示さない。漫画家というか、研究者のようだ。
川勝さんとは、漫画『湯布院奇行』のときにお世話になった。

漫画『湯布院奇行』 不思議な世界は、不思議なままで。
もともとは雑誌に寄稿しようと思った短い文章だった。それが巡りめぐって、朗読劇になることが決まった。『渓谷堂』という仮のタイトルを付けていたが、そのときに『湯布院奇行』に変えた。
朗読劇には成田凌さんと黒木華さんに出演してもらい、演出を『Tシャツが乾くまで』などを手がけている土井裕泰さんにお願いした。
東京に疲れた作家が、とある現代アーティストに誘われて、湯布院へ行く。
そこには「渓谷堂」という、陶芸教室を生業にした店がある。作家を待っていたのは、白いワンピースを着たショートカットの女だった。
作家が到着したことを知って、階段からもうひとりの女が降りてくる。
その女もまた、白いワンピースを着たショートカットの女だった。
気づくと作家は、彼女たちが営む宿の温泉に浸かっている。宿から出たいと思うが、どうしても出ることができない、……というお話。
途中までは実話で、途中からはいつか見た夢、もしくは悪夢。
その物語が、さらに巡りにめぐって漫画にもなった。その漫画を描いてくれたのが、川勝さんだった。夢、というか悪夢のような物語を、川勝さんなりの解釈で仕上げてもらった。いまでも、ときどき読み返す。
もちろん、まったく腑には落ちない。でも、そこがいい。それでも、迫力のある絵と台詞がつづき、気がつくと最後まで一気に読んでしまう。

24日は、みなとみらいフェスティバル。みなとみらいの花火大会だ。
