「自分も小説を書いてみようかと」底なしの出会い#08
年下の先輩。ときどきそう呼びたくなるほど優秀な後輩に出会う。正直まま出会う。
ただ、その中でもずば抜けて優秀な後輩がひとりいる。その彼とは元々、大人数のなにかの飲み会で出会った。僕が最初の小説を出版してすぐくらいのときのことだ。
あるとき、彼はやけに神妙な顔をして、「さしで飲めませんか?」と言ってきた。行こうか、くらいの気持ちですぐに飲みに行った気がする。彼の人懐っこさが好きだったのだ。
「あの、自分も小説を書いてみようかと思いまして……」
一杯目のレモンサワーを飲み干す前に、彼は唐突にそう言う。
「で、テーマはもう考えていて……」彼がそこで口にした内容はかなり小難しい、所謂、純文学のようなものだった。僕はまだ一冊しか本を書いたことがなかったのに、そのとき飲んでいたレモンサワーも手伝って、偉そうなことを彼に言ってしまう。
彼が好きなミュージシャンが『Mr.Children』だというので、「だったら、アルバムの隠れた名曲みたいなものを最初に書かないほうがいいよ。最初はやっぱり『イノセントワールド』みたいな作品が必要なんじゃない?」と。
振り返っても相当偉そうだ。聞く人が聞けば、文学をなんだと思ってるんだ! と怒られそうで怖い。ただ、僕も彼もネット、Twitter(現X)から物を書きはじめるという、端的に言えば、出が悪いコースからの出発なので、ある程度売れないと次の声はかからないのを知っていた。だから、いきなり「文学です」みたいな顔をしたら、それっきりになる可能性が高いと思ったのだ。