「あの頃は東京してたなあ……」(11月5日)
今日は、いろいろあって、昼間からずっとJ-WAVEにいた。
昼は田中渓さんの番組にゲスト出演し、夕方からは『BEFORE DAWN』の収録。その合間は、締め切りに間に合っていない原稿に手を入れていた。来年二月に発売予定の本だ。
一行ずつ音読しながら直しているのだが、声に出すと、黙って読んでいたときには気づかなかったところが気になってくる。直しては読む、直しては読む、の繰り返し。キリがない。まったく終わる気配がない。
延々と音読をしていると、担当編集者から電話がかかってきた。「ちょっと直接説明したいんですが、いまどちらですか?」と。「ああ、いまJ-WAVEです」と告げた。すると、「またカッコつけちゃって……」と呆れたように言われた。いや……だって、ほら、ほれ、と取り繕ったが、ここは六本木ヒルズ三十三階。窓の外には東京タワーが霞んで見える。「たしかに……」そう返してしまった。「すんません」も足しておいた。
いつかきっと、今日のことを思い出して、「あの頃は東京してたなあ……」なんて感慨深くなるだろう。まだ辛うじて、その真っ最中なのに、少し懐かしい気持ちにすらなった。
会社を休職して、ドイツに留学している友人から、「こっちは冬だよ。東京はどうだ?」というLINEが届いた。「こっちもなかなか寒くなってきたよ」と返した。

大阪の写真。どこかはよくわからない。
Xにメッセージがドドドと届いていた。なぜか、ふと一通開いてしまった。
「◯◯さんをドラマに出演させてほしくなかったです。ファンはみんな迷惑しています……」とあった。
……しまった。だから出会い頭のメッセージは読んではいけないと、あれほど自分に言い聞かせていたのに。以前、「この間のメッセージ読んでくれましたか? 早く返事をください」という内容のものが届いたことがあった。もっとこわいものもときどき届く。
それ以来、出会い頭のメッセージは、基本的に開かないし、返さないようにしている。……しているのに、久々にやってしまった。読んだのは一通、たった数行なのに、閉じたあとも頭の中で「…………」が延々とつづいている。全力で自戒中。
「あなたのエッセイで私は傷つきました」と便箋でもらったこともある(先月)。数年前に「小説に出てくる女性、『優香』は私のことですね。すぐにわかりました。傷ついてます」という異次元からのメッセージもあった。みんな自分の傷つきには敏感だが、その矢を向けた側、こちらの心情に関しては、信じられないくらいに鈍感だ。
昨日詰めた奥歯が、ジンジンと痛い。「少し痛みが出ます」と歯医者に言われてはいたので、もう一日様子を見てみようかと思っている。不安だ。
マガジンハウスから、エッセイ集『夜がほどける』を十二月十日に刊行する。来年は、たぶん人生でいちばんの刊行ラッシュになるので、出すならこのタイミングしかなかった。来年のことを考えると、いまから本当にこわい。
『夜がほどける』は、『明けないで夜』のつづきになる一冊。本の大きさもほぼ同じ。装画と挿し絵も、前作に引きつづき、原倫子さんに描いていただいた。書体やデザインなども、踏襲している。
この一年、さまざまな雑誌やフリーマガジンなどに書いてきた原稿を、もれなく集めた。ドラマ『杉咲花の撮休』の脚本まで収録してある。あちこちに散らばっていた文章が、一冊に収まった。とてもかわいい本になったと思う。
田中渓さんの番組収録中、質問に答えているうちに、肝心の質問がなんだったのか、わからなくなってしまった。また会話が迷子になってしまった。
田中渓さんの番組を聴いているのは、きっとビジネススキルの高い方々だ。そんな人たちに、話の行き先を見失っているところを聴かれるのかと思うと、オンエアがこわい。
会話の途中で、「あれ? いま、何について話してるんだっけ?」となることが、最近また多い。口は動いているのに、頭の中では、ここはどこですか、と訊いている。

