『喫茶コロラド』で考える(1月29日)
母の病院は川を渡ったらすぐ川崎という、横浜の東の外れの場所にある。
午後に病院に着くと、救急車が三台行列を作っていた。病室は満室。医者曰く、救急も三件に一件は断らないといけない状態らしい。だというのに、病院は常に赤字なのだとか。最新機器や人件費が原因というようなことをボソッと言っていているのを看護師から聞いた。
駅前では、選挙の候補者がボランティアたちと一緒に、忙しくなくチラシを配って、駆けずり回っていた。いつもは絶対もらわないチラシを咄嗟にもらってしまった。必要以上にニコニコとチラシを配る候補者に言っても仕方がないが、適材適所に税金を使うということは、そんなに難しいことなのか? と思わず訊きたくなった(訊かなかったけれど)。
母は食事を半分くらい食べてくれている。咳がつづいて苦しくなると、薬(麻薬)を入れてもらう。いつもは威勢がいい父が、窓辺の椅子に座って、俯いたままだった。
母は酸素マスクをして、諸々管も付けて、ベッドに縛りつけられている。一月の二週目のときは、まだ居間で座って、一緒に話が出来ていた。そのときのことが、遠い遠い昔のことのようだ。管に繋がれた自分の姿を見て、母が「もう帰れない」などと言う。そんなことはないよ、とは簡単に言えない状態だが、ふと簡単に言ってしまう。そんなことはないよ、と。
酸素マスクで、母の声が聞き取りずらい。なにか言っているので、耳を近づけてみると、「改装した東急ストアに行ってみたかったわ」と微かに笑った。なにそれ、と思わず返した。駅前の東急ストアは、いま改装中で、リニューアルオープンはもうしばらくかかる、とのこと。
母は、高島屋と東急ストアに買い物に行くことがなにより好きだった。