下北沢トロワ・シャンブルで対談(8月31日)
下北沢で喫茶店に行くとしたら、『トロワ・シャンブル』一択だ。
いきなり、言いすぎたかもしれない。
でも、本当によく行く。自分が知るかぎり、一番理想的な喫茶店だ。
その『トロワ・シャンブル』を、初めて仕事で訪れた。とあるミュージシャンとの対談。九月末くらいに発売される雑誌の企画だ。そのミュージシャンとは初対面だったのだが、小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』を読んで、曲を作ってくれていた。
前にも「小説を読んで、曲を作りました!」と言われたことがあった。J-WAVEのトイレでだった。
知らないところで、知らない誰かが、小説やエッセイを読んで、知らないうちに曲を作ってくれていたり、漫画を描いてくれていたりする。そんな話を聞くと、やっぱり嬉しい。
狭い部屋で、机に向かってカタカタやっていた文章の塊が、ずいぶん遠くまで飛んでいったんだなあ、と今日はつくづく思った。

下北に来たら、『トロワ・シャンブル』にふらっと行ってみてほしい。落ち着きます。
『トロワ・シャンブル』では、アイスカフェオレを注文した。
取材中、先方にはスタイリストがつく。ヘアメイクもいる。細かく髪の毛をフワッとさせたり、唇にリップを塗ってもらったりしている。ただでさえカッコいいバンドマンが、さらにカッコよくなっていく。
その間、こちらはジッとしている。
自分で髪の毛をちょっと分けてみたり、フワッとさせてみたりするが、どうにもならない。カバンに入れていたリップクリームを塗ってみたりもした。
こういう取材や対談のとき、いつも思う。こっちもやってくれ、と。
いや、お前、金払ってないやん! という主張はわかる。でも、あまりにもハンディキャップマッチすぎる。
「若い、カッコいい、スタイリストもヘアメイクもいます」vs「素のおじさん」
卑怯だ。自分が可哀想だ。
ただ、今日の現場は違った。途中で、対談相手のバンドマンが、「俺、実家が燃え殻さんの実家と近いんすよ!」と言い出した。そのあとに「俺、◯◯です」と言った駅が、ウチの実家の二駅先だった。
「マジ! 近い! ウチ、◯◯だよ!」そう返すと、
「ええええっ!」と突然、ヘアメイクの男性が声を上げた。
「俺も同じ駅です!」
「えっ、じゃあ小学校どこ通っていた?」と聞いてみると、なんと同じ小学校卒だった。
「マジっすか!」のあとに、ヘアメイクの男性と謎の握手をした。
すると、最後に並んで写真を撮る段階になって、ヘアメイクの男性が、僕の前髪をチョコチョコといじってくれた。小学校の先輩ということでの、前髪チョコチョコだったのかもしれない。嬉しかった。初めてのヘアメイク体験だった。