「じゃーん!」底なしの出会い#23

久しぶりに旧友三人と飲みに行った。ひとりは四谷で居酒屋を経営している。もうひとりは役職なしのサラリーマン。最後のひとりは、父親と一緒に不動産屋を営んでいる。
最初はずっと、「お前は好きなように生きていて、いいよなあ〜」と僕のことを三者三様の言い方で茶化していたが、アルコールが入ってくると形勢が変わってくる。
三人の内のひとりが、「じゃーん!」と、マッチングアプリに登録している自分のプロフィール画面を見せてきた。「お前、マッチングアプリやってんの⁈」僕は驚きを隠せない。
「なら、じゃーん!」ともうひとりも自分のマッチングアプリのプロフィール画面を見せてきた。
「俺も〜!」と最後のひとりもスマホを見せてきた。
「お前ら……」それ以上の言葉出てこなかった。出てこないわりには、彼らがマッチした女性のことについては、根掘り葉掘り聞きまくってしまった。
その場にいた人間で登録していないのは僕だけ。僕だけがクリーンなのだ! と言いたいわけじゃない。僕だって、できることなら登録したい。
でも、これができない事情がある。登録した途端、スクショが撮られ、SNSに晒されるのだ。お前ごときが? という声が聞こえてきた。わかる。自分ごとき、本当に見逃してほしい。でも、見逃してくれないことを僕はもう知っている。
デザイナーの友人Sが、先日、SNSの片隅で、小さく小さく燃えていた。燃えていた、は言い過ぎで、ボヤくらいだった可能性も高い。Sはマッチングアプリに投稿している自分のプロフィール画像をスクショされ、それがSNSで晒されたのだ。
Sには今年生まれたばかりの娘がいた。たとえそれが、炎上じゃなくてボヤだったとしても、社会的信用の失墜、家庭不和が起こっていた。それはそれは起こっていた。ボヤのはずなのに、被害は甚大なものがあった。
Sは正直、世間で「有名」という感じではない。デザイナーとしては、もちろん食べていけているが、フォロワーが多い、インフルエンサーというわけでもない。なのにしっかり晒され、小規模ながらしっかり拡散され、いま仕事ができない状態に陥っている。
多分、「デザイナー」とか名乗っているのにマッチングアプリ! それも写真必死じゃん! ウケるくらいの感じで燃えたんだと思う。それをアリーナ席でガタガタ震えながらガン見していた身としては、「みんなやってるし!」くらいの理由でマッチングアプリに手など出せないのだ。ほぼ大麻レベルなのだ。