あんたはだいじょうぶ(4月28日)
作家の戌井昭人さんと、一緒に仕事をする予定で、ときどき飲んでいる。
戌井さんはカッコつけをまったくしない。「もうさ、お金がないからさ、バイトしようと思って履歴書、書いたんだ!」飲む前に突然そう言われた。この時点で、こちらの奢りがまず確定した。
「パンフレット制作ってあったからさ、思いっきり『芥川賞候補として五回ノミネート』って書いたんだけどさ、書類で落とされたよ! なんだよ、ちくしょー!」酎ハイを飲みながら、戌井さんはそう言って、ほっぺたをブルブル震わせて怒った。
戌井さんの芥川賞候補作『すっぽん心中』は間違いなく傑作だと思う。ゲラゲラ笑いながら読んだ小説は後にも先にも『すっぽん心中』だけだ。
そんな戌井さんが新作を出した。『あんたはだいじょうぶ』。
足芸をする曲芸一座の家に生まれた主人公のお話。3歳でアメリカ巡業に出るが、6歳で父と生き別れ、18歳で母を喪う。第二次世界大戦中は日本人を収容するマンザナー強制収容所で過ごし、終戦後はホテルのメイドとして働いていたが、ある日、ピストルの流れ弾にあたって天啓を受け「あんたはだいじょうぶ」と唱えながら街角で足芸をはじめることに……。
……って、どんな話なんすか! と突っ込みたいがそれが戌井昭人だ。


戌井さんと『SWITCH』スタジオにて。
J-WAVE『BEFORE DAWN』収録。ゲストは、新日本プロレス所属、エル・デスペラード選手。俵万智さんの次のゲストが、エル・デスペラード選手。我ながらいい番組をやっている。
いつもの床屋で、三週間ぶりにシェービング。指名しているマネージャーに「髭ボーボーっすね」と呆れられる。自分で髭剃ることはほとんどなく、伸びすぎたら、いつも行く床屋で、いつものマネージャーに剃ってもらっている。
「新人がふたり入ったんです!」マネージャーにそう言われて、鏡越しに、新人ふたりと軽く挨拶。「見学させていただきます!」ふたりともそう言って頭を下げた。「ああ……」と返答。
では始めます、とマネージャーが自分の頭にシャンプーをジャンジャンかける。
あっという間に、濡れ落ち葉のようになった自分を、ふたりが真剣な顔でメモを取りながら見ていた。
いつ何時でも穏やかなマネージャーが、ささやくような声で、「タオルは?」「チッ……遅い」とふたりにピリピリ注意し始める。こちらはもう深めの寝たフリをするしかなかった。
「ゴールデンウイークってあるんすか?」マネージャーがそう尋ねてきたが、寝たフリに入ってしまっていたので、シカトしてしまった。