編集者の悪意のない言葉。帯文をめぐる傷つき 底なしの出会い#25
「聞くのはタダ」

本を作る過程で必ず、「帯文を誰に頼むのか?」という問題が出てくる。文庫の場合だと、「解説を誰に頼むのか?」という問題もある。「宣伝のための対談などを誰に頼むか?」ということも決めなくてはいけない。
自分が、この人にお願いしたいと、編集者に伝えることもある。だがその場合、編集者から「あの、その人どなたですか?」と返ってくるときがたまにある。
編集者が知らない人、知っているが、宣伝として成立しない人、と判断された場合、「影響力がある人でお願いします!」という趣旨のことを、丁寧な言い方で言われる。
わかる。こちらだって、出来るだけ多くの人に読んでもらいたい。ただ、あまりに「著名人で影響力がある人」だけを第一に考えると、飲み会の席で、「あの連ドラのヒロインの女優さんと一度でいいから飲みたいなあ〜」みたいな決め方に限りなく近づいていく。「最近めっちゃくちゃいろいろなメディアに出ている、よく知らないけど、すごい人気のあの人!」みたいな選び方になる可能性が高い。
そういう人気者の場合、面識がないことがほとんどだ。だいたいの場合、「とりあえず、聞くのはタダなんで、問い合わせだけしてみましょう!」と編集者が言って、一度当たってみることになる。
事務所などの問い合わせページにメッセージを出す、という正面突破だ。そして十中八九、「先日の女優の◯◯さんの件ですが、やっぱり難しいとのことでした。大河女優ですからね。そりゃそうか」とか言われて終わる。
「燃え殻さんがずっとファンだと言っていた、ミュージシャンの◯◯さんに、対談いかがでしょうか? と問い合わせしたんですが、返信すらないです。やっぱり売れてるから、調子乗ってるんすかねえ〜」なんて感じで終わることもある。
わかってはいるが傷つく。その女優さんをCMで観るたび、ちょっと悲しくなる。音信不通のミュージシャンの楽曲を、ごっそり削除したこともある。
断られるたびに、ちゃんと一回傷ついている。編集者に悪気はない。というか、それが日常だ。わかってはいる。そっちの事情も理解した上で傷ついている、とも言わせてほしい。
「まあ、気を取り直して、またドンドン問い合わせていきましょう! 問い合わせるのはタダなんで!」編集者は笑顔でまたそう言ってくる。悪気はない。わかってはいる。