「窓の外に向かって、黄昏れて」(10月6日)
スーツを着たサラリーマンが、渋谷の改札近くの通路で、片膝をついたままノートパソコンをカタカタ打ち、スマホに向かって「ハイ! ハイ!」と答えていた。がんばってるなあ……、と、しみじみしてしまった。
「五分、相談できませんか?」
深夜、年下だが尊敬している友人(最近、そういう方ばかりなのだが……)から連絡があった。電話は五分のはずが、二時間くらいになった。
話を聞いても、基本「大変だなあ」としか返せなかった。ただ、「大変だなあ」を伝えられてよかったとも思った。
「わかってます。わかってるんですが、全部をのみ込めるほど、自分だって単純じゃないです。一回、「大変だなあ」って言ってもらっていいですか?」そんな感じに聞こえた。
ただ、いい年こいて、「大変だなあ」だけで済ませてしまって、申し訳なかったとも思い、先ほど、「追伸」のようなLINEを送った。
ザックリ言うと、川で洗濯をしていても、腕がダルいなら、流れてきたデカい桃をスルーしてもいいと思う、ということを送った。
正しいかはわからないが、「おばあさんは、今日は桃を拾いませんでした。めでたし、めでたし」な日があってもいいと思ったからだ。そんな日もある。
桃でも、チャンスでも、責任でも、美女でも、大金でも、持てるだけ持てばいいって話じゃない。何事も過ぎれば病気になるし、自分も周りも不幸になる。君がニカッと笑っていると嬉しい。みたいなLINEを送った。
そして信じられないことに、この間の「サイン書き」数百冊だけで、軽い腱鞘炎になってしまった。思いっきり湿布を貼っている。
「見えてますよ、湿布」と編集者に言われたが、見えてる箇所が痛いんです、としか返せなかった。とにかく腕がダルい、ダル過ぎる。桃はもちろんスルーしたい。
『別冊カドカワ Scene18』にJ-WAVE「BEFORE DAWN」の記事が掲載されている。「窓の外に向かって、黄昏れて」「膝抱えてみましょう」「もちろん頬杖ついてみましょう」「遠くを見つめてください、BEFORE DAWNって感じで!」とカメラマンの注文は、無限に飛んできた。