「一番忘れられないセックスはなに?」底なしの出会い#19

エロネタにすべて持っていかれる
燃え殻 2026.03.26
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AV監督の二村ヒトシさんが主催するトークイベントに参加してしまった。しまった、と言いたいほど、若干後悔している。自分がまったくうまく機能せず、会場を盛り上げることができなかったからだ。

僕以外の登壇者は、モテ過ぎて困っている男性ファッションモデル二十六歳、日本一予約が取れないレンタル彼女、人気占い師の女性、人気AV女優さんという奇々怪界なメンバー。観客席には有名AV男優さん、風俗ライター、謎の薄着の美女などなど多数。アウェー、という言葉を可視化したような風景が、僕の前に広がっていた。

カタギ少なめの会場。つまり二村ヒトシワールド。まったく安請け合いしていい案件ではなかった。二村さんから「出てよ!」と連絡があって、いつもお世話になってるし……、で思わず安請け合いをしてしまった。

一応、トークイベントの主旨は「人生相談」ということだった。登壇者が悩みを相談するという建て付け。モテ過ぎて困るファッションモデルの男性の悩みは、「金持ちで有名AV女優のセフレに、負い目を感じてセックスがうまく出来ない」というもの。悩みっぽさは一応あるが、自慢げっぽさのほうが、濃度としては濃い気もした。

セックス中も自分の姿を鏡でチェックするという彼は、モデルとしての資質は十分だが、人間としてはなかなかだ。でも屈託のない笑顔と怒涛のエロ話で、会場は大ウケだった。登壇者のAV女優さんも彼の会話に割って入り、会場はヤンヤヤンヤの大騒ぎ。

そして次は僕の番だ。「物書きになって、ある程度仕事をこなしても全然儲からない」という地味な悩みをマイク越しに吐露してしまう。会場はシーンと静まり返った。その夜初の静寂が訪れた。エロネタのあとに、物書きは儲からないネタはあまりに弱い。

結局、司会の二村さんがうまく転がしてくれて、儲からないネタではない、「AV観るとき、検索ワードはなに入れる?」という、まったく関係ない質問をふってくれ、無理矢理に会場を沸かせてくれた。そして二村さんは、「いままでで、一番忘れられないセックスはなに?」と他の登壇者に聞き始めて、僕のすべりを濁しに濁してくれて、なんとか場は持った。

イベントが終わり、すっかり自信を失った僕は、控え室に戻って荷物をまとめて、早々に帰ろうとしていた。そこにさっきまで一緒に登壇していた占い師の女性が声をかけてくる。「あら、もう帰っちゃうの? ちょっとだけ手相見せてもらっていいかしら?」と。

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